どうもGcraudClassicのTADAです。
あるチームから「CFRPの加工方法を教えて下さい」との依頼がありましたので紹介したいと思います。

元はというのも、世界大会用のマシンの材料にカーボンを使っていて、製作過程をTwitterにUPしていたら、他チームの方から反応があった感じです。 

主なカーボンの入手先としては
ゼロ・カーボン
ドライカーボンの板材
Carbon Goods
同じく、ドライカーボンの板材
フタバオンライン
ラジコン用のウェットカーボンの板材、他FRP

今回使ったのはフタバオンラインさんで購入したウェットカーボンです。
ドライも考えたんですが、コストだったり、機械の加工能力だったり、そもそもそこまで強度も必要なかったりで、今回は使いませんでした。ウェットの方がドライと比較すると若干安いです。

ドライカーボンとウェットカーボンの違いは割愛します。
ドライカーボンは、いわゆるF-1のボディに使われているあの"カーボン"の事です。
ウェットは「なんちゃってカーボン」ですね。

それでは説明に移ります。
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CNCはオリジナルマインドさんのKitMill SR420を使っています。
オプションで三段プーリーを付けて、スピンドル回転数約10000[min^-1]で加工を行っています。

まず、油中加工用のトレーを自作します。
材料はプラスチックやら、何でも大丈夫だと思いますが、出来るだけ厚手のものを選んだほうが、テーブル剛性を損なわないで済むので、良いと思います。自分は、たまたま床に落ちてたt5のPET樹脂を面出ししてボルト穴付けて、CNC側のテーブルにも固定穴を空けて、最終的にトレーをCNCのテーブルにボルト止めする構造にしました。
このトレーの中に油を満たして加工を行いますので、水が漏れないのが前提条件です。

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今回切削するカーボン板
フタバオンラインさんで注文しました、ラジコン用のウェットカーボン、厚さ1.0の200x330[mm]です。

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使用する切削液
エーゼットの水溶性切削液を15~20倍にうすめて使用します。
原液は茶色いんですが、水に溶かすと白く変色します。
1回で使う量だけをペットボトルに入れて混ぜあわせて、そのまま使っています(ほっとくと腐ります)。
ペプシのペットボトルに入れて使ってみたんですが、切削液にペプシの匂いが若干移るのであんまりオススメしないです。おいしい水、とかのペットボトルがいいんじゃないでしょうか。  

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板材は両面テープで固定します。
両面テープには、カーペットテープを使用しました。
幅の太い、かつテープの厚さが分厚いものを使用します、カーボン加工の際は原則完全に材料を切り抜き、下のテープごと巻き込んで削りますので、厚手のテープが使いやすいです。
幅広のテープを使うと、油の侵入を防ぐことが出来ます。
普通の20ミリ幅の両面テープは、すぐに油が侵入してきて剥がれちゃいます。

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テーブルにボルトでトレーを固定します。
六角穴付きボルトのM4を4本で、十分固定できました。
トレーをしっかり密着させながらボルトを締めないと平面が出ませんので注意です。

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エンドミルはオリジナルマインドの快刀乱麻CNを使いました。
かなり安価です(約500円/本)
特にこれといってCFRPに向いているわけでもなく、使い捨てがしやすい(安い)のでこれを使っています。
エンドミルは基本的に使い捨て、1加工終了したら、もう捨てちゃいます。
当然ですがカーボンは刃物の超硬合金よりも硬いので、カーボンを削るとエンドミルがどんどん消耗していってしまいます。

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材料、エンドミルをセットし、原点を設定します。

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トレーに水溶性切削液を満たして、加工を開始します。
切削粉が油の中に広がっていきます。
どう事故っても、絶対にドライで加工するべきでは無いと思います。切削粉はカーボンですし、当然ながら人体に有害です。数十年先の体に、肺がんなどの病気を引き起こすと言われています。
出来るだけ切削で出たカーボン粉末を吸わないようにする必要があります。

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加工が終わりました。
スピンドルの回転で油の中がかき回されていますが、粉が単体で飛ぶことはほとんど抑えられています。
作業中は出来ればマスクしたほうがいいですね…。

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スポイト(これをスポイトと呼んでいいのか)を使って油を回収します。
切削液が入っていたペットボトルの中に戻し、蓋をします。
液をろ過して、残った水溶性切削液は晴れた日に外で干して水分を飛ばし、油のみ燃えるゴミです。
ろ過したフィルタは、ジップ袋に閉じて燃えないゴミです。
燃えないゴミでOKかどうかは各自確認して下さい、ただ、カーボンは焼却処理するとススが舞うので、世間一般的には「廃プラスチック」として埋め立て処理するのが一般的です。

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切削時に巻き込んだテープなどが沢山付いてます。
これを、外の水道で洗い流します。当然ですが排水口にはフィルタ付けてください。
黒いススが沢山残ると思うので、フィルタごとジップ袋に閉じて燃えないごみです。 

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洗い流しました。
一見綺麗に見えますが、材料の裏面にはまだカーボンの切削粉が残っていますので、出来るだけ乾かさないように(いつもはトレーに水を満たして剥がす)して、材料を剥がす工程に移ります。

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材料を端材まで全て剥がし、捨てるのは両面テープだけにします。
パーツと端材をそれぞれ、#800~#1500の耐水ペーパーを使用して、水中でバリ取りをします。
バリ取りを行わずにパーツを使用すると、アルミ等と違い切削面がささくれ立っているカーボンのパーツは、触れるだけで手が切れてしまします。カーボンが指の中に残ってしまったりすると、非常に危険ですしめんどくさいので、端面処理をしっかり行うようにします。
加えて、カーボンのフレームをバネのように使用する場合、板が積層部分で縦に割れてしまうことがあります。そういった場合は、耐水ペーパーで処理をした上で、切削面に瞬間接着剤をペタペタ付けてやると解決します。

触る部分を特に念入りに、絶対に水中から出さずにしっかり磨きます。当然ですが耐水ペーパーもカーボンを削るとすぐダメになっちゃうので、耐水ペーパーはケチらずに使いまくりましょう。

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完成したパーツです。
バリも綺麗に取れ、切削面もツルツルです、ねじも通りました。